富士電機(株)における活用事例 その1
理科・電気の面白さを伝えるために
富士電機株式会社 技術開発本部 技術戦略室 研究管理
小倉英之
1.はじめに
富士電機では従来、科学技術の素晴らしさを子どもたちに伝えていくために、子どもたちを対象とした理科教室を積極的に行っている。加えて、小・中学校の教員を対象に、理科の面白さ、ものつくりの大切さを伝えるとともに、最新の技術動向などの情報を提供し、実際の授業に役立てていただくための研修や、子どもたちのものつくりへの興味・関心を喚起する職場体験等を行っている。
このたび、当社は、一般社団法人日本電機工業会(JEMA)理科教育支援プログラムの「プログラミング学習編」を活用した教材を開発し、教員と中学生に対して試験的な体験教室を開催したので、その報告を行う。
体験授業風景
先生方の実験の様子
2.日野市小学校教員向け体験授業 (富士電機東京工場:東京都日野市)
2.1 実施目的
2023 年8 月8 日に、東京工場が立地している日野市の小・中学校教員を対象とした民間企業研修において、当社が開発した教材を用いて体験授業を実施した。
民間企業研修は、一般財団法人経済広報センターからの要請に基づき実施しているもので、今回当社が次世代育成支援にも注力していることの周知に加え、対象である小学校教員に対して、この教材に対する改善点等についてご意見をいただくことを目的とした。
2.2 体験授業の様子
日野市の小学校教員17 名が4 ~5 名のグループ四つに分かれて、炊飯器の温度変化の再現実験を体験した。はじめに、当社の事業・製品と関連付けながら電気が作られ・送られ・使われる流れを説明し、身近な電気製品がどうして正しく動作するのか、と発問した後に、炊飯器を題材においしいご飯を炊くための温度変化はどうすれば実現できるのかという課題に対し、実験器具を使って再現することにチャレンジいただいた。
再現実験の2 回目には理想に近い温度変化を実現できたグループもあり、難しさにチャレンジすることを楽しんでいる様子が散見された。
2.3 先生方のご意見
体験授業の最後に、先生方にアンケートを実施して改善点等を指摘いただいた。
〈回答(一部)〉
- 理想の温度変化をイメージさせるために、もう少し丁寧な説明が欲しい
- 実験器具の使い方(電池ボックスへのクリップのつなぎ方等)をちゃんと説明した方が良い
- 15 秒ごとのタイムキーピングは児童には難しいかもしれない
等、貴重な意見をいただくことができた。
3.中学生の職場体験における理科実験 (富士電機鈴鹿工場:三重県鈴鹿市)
3.1 実施目的
2023 年9 月12 日に鈴鹿市の中学生を対象とした職場体験において、電気への興味を持ってもらうための取組みとして、JEMA プログラムを基にした理科実験を体験してもらった。職場体験では、従来、工場の紹介から見学、現場での製造実習等を行っていたが、理科が好きな子どもたちや将来メーカで働きたいと思う子どもたちがもっと増えてほしいとの思いから、楽しい理科実験を体験してもらうために、今回、職場体験の活動の中に取り入れたものである。
中学生による実験の様子
実験結果のグラフ
3.2 理科実験の様子
職場体験に参加した中学生は2 名であったため、実験時には当社社員が一部の役割を分担して実施した。はじめに、当社の製品が電気を上手に使って生活に役立っていることを説明し、製品が出来上がるまでのプロセスにおける各部門の役割や、鈴鹿工場で製造している製品を題材に、製品の設計手順について説明等を行った。
実験に際しては実験器具のレイアウトを印刷した紙を用意し、各実験器具をその上に配置・固定することで、配置・接続がスムーズに行えるよう独自の工夫も凝らしている。炊飯器の温度変化に関する再現実験では、1 回目の実験結果を改善しようとするあまり、2回目の実験では温度が上がり切らない結果になってしまったが、制御の難しさや改善に向けた取組みの繰り返し(トライアンドエラー)の重要性などを学んでもらえたと思う。こうした体験が電気を理解し、理科を好きになってもらう一助になればと考えている。
4.最後に
今回、JEMA で開発したプログラムを活用した理科教室用の教材を用いて試験的な体験教室を開催した。今回の体験の様子・指摘を踏まえて教材の改良を行い、工場・支部等で実施している夏休みの理科教室等への活用展開を進める予定である。このような理科教室の体験等を通じて、継続的に子どもたちに電気の面白さを伝えていきたい。
(『電機』2023年12月号より転載)