会長就任挨拶
本日、日本電機工業会の会長を仰せつかりました、漆間でございます。
皆さまには平素より当工業会の活動に多大なご理解ご支援をいただき、厚く御礼申し上げます。
会長就任に当たり、一言ご挨拶を申し上げます。
まず、近藤前会長におかれましては、私ども電機業界の先頭に立たれ、国や業界が抱える様々な課題に対応し、そして発展と成長を目指して、積極的に取り組んで来られたご尽力とご功績に心から敬意を表しますとともに、厚く御礼を申し上げます。
皆さまご承知のとおり、世界経済は長引くウクライナ・中東紛争や米中対立、トランプ関税により、株価、為替も大きく影響を受け、景気の先行きが不透明な状況になりつつあります。一方良いニュースとして、国内では大阪・関西万博が開催され、観光を絡めて世界中から多くの方が来訪され、日本への注目と期待が集まり、日本の魅力や技術力を世界に発信する絶好の機会となっています。私ども日本電機工業会は、日々刻々と変化する世界情勢・国内状況を注視しながら、変化をチャンスと捉え、柔軟に対応することによって、日本の電機業界の発展に努めて参ります。
さて、日本電機工業会では、持続可能な社会を目指して、さまざまな社会課題に向き合っておりますが、カーボンニュートラルやエネルギーの安定供給、次世代技術による新しい価値の創出、そして資源を大切にする循環型社会に向けて、3つの重点方針を策定し、取り組んでおります。
- カーボンニュートラルとエネルギー安定供給の両立にGXで貢献
- 次世代技術・イノベーションによる新たな価値の創出
- 循環型社会とサステナブルな社会の構築
まず1つめは、「カーボンニュートラルとエネルギー安定供給の両立にGXで貢献」についてです。
当会は、発電設備、送電設備などの電力インフラ機器から産業用機器、家電製品などの電力需要家側の機器まで幅広い製品群を取り扱っている業界団体であり、それらの製品を駆使したGX活動をリードしていく必要がございます。政府のエネルギー基本計画やGX戦略を着実に実行へとつなげるよう、引き続き、政府や関係各所と共に、取り組みを推進して参ります。
具体的には、エネルギーの安定供給に向けて、再生可能エネルギーの主力電源化、CO2を排出しない火力発電の推進、既設原子力発電所の最大限活用などを推進して参ります。また新設の原子力発電所についても、少しでも扉が開けばと考えております。今後、生成AIの普及拡大に伴うデータセンター需要や、半導体製造工場の稼働により、電力需要は増大していくものと見込んでいます。安価で安定的な脱炭素エネルギーが求められる中、その要望に応えられるように電機業界として、エネルギー供給面と需要面の両面から、技術イノベーションでGXに貢献して参ります。
また、企業の取組み努力や将来性にスポットを当て、企業価値の可視化を図り、市場創出につなげる支援が必要と考えております。その一環として、社会・経済のグリーン化に向けて、会員企業におけるGXへの取り組み状況を把握し、その貢献や努力を、対外的に訴求することを目的に、「JEMA-GXレポート2024」をこの4月に公表しております。
続いて2つめは、「次世代技術・イノベーションによる新市場創出」についてです。
再生可能エネルギーの主力電源化に向けた「次世代型太陽光発電」や「洋上風力発電」、再生可能エネルギーを効率的に送る「直流送電」や電力貯蔵のための「蓄電池システム」、「二酸化炭素回収・貯留技術」、「水素・アンモニアへの燃料転換」といった様々な技術開発項目が挙げられます。さらに原子力分野では、「小型モジュール炉」等の次世代革新炉の開発・建設も重要課題として検討を進めています。わが国産業の国際競争力を高める観点から、政府と一体となってこれら技術の社会実装スピードを加速させると共に、コスト競争力も意識した技術開発と市場展開を、政府の支援も受けながら戦略的に行って行く必要があると考えております。
最後になりますが、3つめは「循環型社会とサステナブルな社会の構築」についてです。
近年、世界規模で進む環境問題や資源の制約が、私たちの産業活動や日常生活に大きな影響を与える中、サステナビリティの確保はもはや選択肢ではなく、企業活動の根幹をなすテーマとなっております。特に電機業界においては、製品のライフサイクル全体を見据えた資源循環の取り組み、省エネルギー技術の進化、さらにはカーボンニュートラルの実現に向けた対応が加速しています。
こうした取り組みの推進にあたり、私たちは「使い捨て」から「循環」への転換を図り、製品設計の段階から再資源化を見据える考え方へと、マインドセットを変えていく必要がございます。また、サプライチェーン全体を通じた持続可能性の確保や、再生可能エネルギーの導入拡大、使用済製品の回収・再利用の強化など、個社の枠組みを超え業界全体で知恵と技術を結集しながら、新たな価値創造に向け取り組んで参る所存です。
以上の取り組みのように、近藤前会長のご指導のもとで当工業会が築いてきた多くの成果を引き継ぎ、国や電機業界の様々な重要課題に対し、当工業会に課せられた社会的使命と役割を認識しながら、会員各社、関係省庁、関連団体の皆様と密な連携を図りながら、しっかりと取り組み対処して参りたいと思います。
皆さまには、今後とも当工業会の活動に一層のご理解・ご支援を賜りますようお願い申し上げ、簡単ではございますが、私の会長就任のご挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
2025年6月13日
一般社団法人 日本電機工業会
会長 漆間 啓