2026.10.05
イベント
欧州サステナビリティ情報開示規制~簡素化の先に、企業はサステナビリティ情報の「何を開示すべきか」~
JEMAでは9月24日、環境ビジネス政策委員会・政策運営委員会の活動の一環として、フィンランドを拠点に欧州・日本企業のサステナビリティ経営や情報開示を支援するToFuAc Oy(トゥーフ・エース株式会社)代表の藤原斗希子氏をお迎えし、「欧州規制(CSRD/ESRS/CSDDD)に関する最新動向」をテーマとした勉強会を開催しました。折しも9月21日には、欧州委員会が7月に採択した簡素化版ESRS(欧州サステナビリティ報告基準)がEU官報に掲載されたばかり。勉強会では、CSRD、改訂ESRSと第三国企業向けESRS-40a、CSDDDの最新動向から、企業がこれらの変化をどのように捉えていくべきかについて議論しました。
- 「簡素化」の意味が問い直される
- 欧州産業界と日系企業に共通する「実装可能性」
- 企業自身の判断「何を開示すべきか」
今回のESRS改訂では、データポイントの大幅削減、マテリアリティ評価やバリューチェーン情報収集の負担軽減、ISSBとの相互運用性向上などが意図されています。しかしながら、これらは開示項目等の単純な簡素化ではないという点です。ダブルマテリアリティの基本原則は維持され、企業の重要なインパクト、リスク、機会を適正に表現するFair Presentationも明確に位置付けられています。つまり、細かな項目を一つずつ埋めること以上に、自社にとって何が重要なのかを判断し、その根拠を説明することが重要になるということです。自社で自ら判断せざるを得ない領域が増えたとも言え、故に難しさがあると考えます。
JEMAからは、欧州産業界を代表するOrgalim(Europe’s technology industries)と、欧州で活動する日系企業を代表するJBCE(Japan Business Council in Europe)のポジションを比較して紹介しました。両者に共通するのは、simplification(簡素化)、legal certainty(法的予見性)、operational feasibility(実装可能性)の重視です。OrgalimがEU産業競争力や加盟国間の制度調和を重視するのに対し、JBCEは第三国企業への域外適用内容の明確化、グローバルサプライチェーンでの実装に関する柔軟な運用、ISSB等との国際的な相互運用性を重視しています。
今回の勉強会で特に重視したのは、「規制が簡素化された後、企業はどう行動するのか」という点です。「規制対象から外れたり、開示項目が削減されること」であっても、投資家、取引先、顧客等ステークホルダーとの対話や企業自身の経営判断という観点から見れば、「規制で要求されなくなっても企業にとって残すべき、開示すべき重要な情報があるのではないか」ということです。既に多くの企業に理解されているように、サステナビリティ情報開示には法的なコンプライアンスの側面と共に、経営判断や市場に対する企業価値の意思表示という側面があると考えます。したがって、規制上のミニマムな情報開示を超えて、例えばGX製品・ソリューションによる社会のGHG排出削減への貢献、すなわち「削減貢献量」などを通じて、企業や産業が社会に生み出すPositive Impact(ポジティブ・インパクト)などもどのように説明していくのかという議論もあると考えます。
JEMAでは今後も欧州規制の最新動向をフォローするとともに、制度対応にとどまらず、電機産業がサステナビリティ情報開示を通じてステークホルダーに企業の社会的価値や貢献をどのように説明し、相互の理解醸成につなげていくことができるのか、会員企業の皆様と議論を深めていきたいと考えています。

