電気を語ろう!第9号

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JEMAの理科教育支援活動 電気を語ろう!第15号

理科教育支援ワーキンググループのメンバーのコラム、JEMA の理科教育支援活動をサポートしてくださる方々からのメッセージを紹介します。

「電気の流れの安全を守る「遮断器」を知っていますか?」

2014年度ノーベル物理学賞に日本人3名が「青色LEDの開発」で受賞されました。日本の電機メーカの一技術者として大変嬉しく日本の技術力を誇りに思います。また、LED電球は、JEMA理科教育セミナー「6年生の電気の利用」でも使用していますが、今後も世界のエネルギーの節約に寄与できるものであり、多くの方が利用することを期待しています。

さて、私は、電機メーカで遮断器の開発をやってきました。火力発電所等の発電所で作った電気は送電線を介して工場や家に運ばれますが、その途中で、電気を運ぶ経路(電力系統)を変更したり、送電線に故障(落雷や氷雪風雨、樹木接触などによる絶縁破壊等)が発生して大きな故障電流により電力設備の破損や電圧低下、停電などの被害が発生しないように瞬時に電気の流れを遮断して、電気の流れの安全を守るのに「遮断器」が使われています。山の中や工場内の変電所等に設置されているので、皆さんはほとんど見たことが無いと思います。雷が鳴ると家の電灯がちらつく現象(瞬停)を経験したことがあると思います。その時に「遮断器」が活躍しています。雷が送電線に落ちると、その送電線を流れる電気を数10分の1秒くらいのすごいスピードで遮断して、別の経路で電気を家まで送り続けます。通常送電は複数(2回線等)の送電線で電気を送っているので1回線を遮断しても停電になりません。電車線路の踏み切りにある「遮断機」は踏み切りを通る人や車の流れを遮断しますが、この「遮断器」は電気の流れを遮断するものです。

電気を運ぶ経路(電力系統)の例

この電気の流れを遮断する「遮断器」は機械品です。電気の流れを遮断する遮断器には、家にある「ブレーカ」(電圧100ボルト、定格電流数十アンペア程度)から、高電圧大電流クラス対応「遮断器」(電圧100万ボルト、定格電流数千アンペア程度)まであります。この高電圧大電流クラスの「遮断器」では、故障電流を遮断する時には数万アンペアの遮断電流になりアーク放電と称する電光が発生します。アーク放電のイメージは稲妻のようなものです。遮断器の内部にアーク放電を消す効果と絶縁性が高いガスを入れています。このガスには通常六フッ化硫黄ガス(SF6)が使用されていますが、地球環境への配慮から真空中で電流を遮断する製品開発も行われており一部製品に採用されています。

この電流を遮断するには、遮断器の中で、電気を流している2つの電極を切り離します。この時に発生するアーク放電を消すことで電流を遮断することになりますが、アーク放電を素早く消すために、この動作時間は数十ミリ秒で完了する必要があります。そのために、いろいろな工夫をしています。電極を切り離す操作機構のスピードを速くしたり、アーク放電周りに効果的にガスを吹き付けたり、そのガスの流れの方向を変えたり、使用している材料を変えたりしています。また、高電圧になるとアース(地球の地表面や電圧0の所)との距離や形状も重要です。これらの課題を克服して「遮断器」を開発するには、電気の知識だけでなく、機械、材料や化学の知識も必要になります。これらの開発は、一人で行っているのではなく、何人ものひとが関わって出来上がります。以上、「遮断器」の技術の一端を紹介しました。

遮断器の内部の切り離し過程

子供達が理科に興味を持ち、大人になって、その中のひとつの科学分野を生涯かけてやり遂げることはすばらしいと思います。次世代のノーベル賞候補の子供達に対して、先生方からの動機づけを期待する次第です。

電圧550kV用遮断器の現地据付例

一般社団法人日本電機工業会 理科教育支援ワーキンググループ 委員 榎田 義勝
[ (株)日立製作所 電力システム社 日立事業所 国分生産本部 研究開発部 ]