電気を語ろう!第9号

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JEMAの理科教育支援活動 電気を語ろう!第14号

理科教育支援ワーキンググループのメンバーのコラム、JEMA の理科教育支援活動をサポートしてくださる方々からのメッセージを紹介します。

「雷から身を守るには?」

昔から日本では、「地震、雷、火事、親父」 なる怖いものの代表を簡潔に表現することわざがありました。
昨今「親父」は怖いものから外した方が良い感じですが、「地震、雷」はまだまだ健在です。
3年前( 2011年7月「電気を語ろう」第4号 )に様々な雷について紹介しましたが、今回は具体的な雷から安全に 身を守る方法について紹介します。

まず雷とはどんなものか?という基本的な現象のおさらいです。
図1に夏に発生する雷雲(入道雲とも言う)の構造を示しますが、雲の底に集まるマイナス電荷が地面に落ちてくる現象のことを言います。電圧で数千万ボルトか数億ボルトですので、人間も機械もまともに雷を受けると死んでしまいます。(家庭用の電源は100ボルトか 200ボルトです。)
そこで雷から身を守る方法ですが大事なことは次の2つです。

① 危険が予測される行動はとらない。具体的には、雨、雷が予測される天候で登山、ゴルフ等をしない。
② 周囲の異変を敏感に察知してすぐに避難行動をとる。具体的には、急に空が暗くなったり、冷たい風を感じた時は
  速やかに頑丈な建物内へ避難する事。頑丈な建物が無い時は車の中に逃げても有効です。

図1 夏季雷の構造(断面図)

では周囲に頑丈な建物も車も無い時(山や草原、海の近くにいる場合を想定)で近くに大きな木があった場合は? ここからが本題です。木の下に逃げ込むのは誰でも考えますが、具体的にどこに避難すれば良いかが生死を分ける事になります。

図2に大きな木を横から見た絵を示します。 木の高さを H として、木を中心として半径Hの円と木の頂上でできる三角錐の内部が一応安全とは教えてくれていますが、実は盲点があるのです。落雷が木の頂上にあり、電流 I が木の内部を地面に向かって流れると、人間の身長 HM に対応する木の抵抗 RHM として ( I*RHM ) なる電圧がA点に発生します。そして木から人間までの距離が概略 2m 以下ですと、A点から人間の頭に向かって側雷が発生し、人間の体内を電流が流れてよくて重体、殆どの場合死亡します。対策は、以下のとおりです。

① 木の幹から4m離れしゃがむ。( HM, RHM を半分以下)
② 地面に寝ない。寝ていると落雷の電流が地表面を流れて火傷の重傷を負う危険性があります。

図2 ホルツの保護範囲の説明図

2012年夏福岡の女学生が大阪の野外音楽祭に来ていて落雷で死亡した新聞記事を図3に示しますが、木の幹表皮が剥がれていて側雷があった事を示しています。 女学生が今回説明した対策内容が判っていれば死亡は避けられたと悔やまれます。木の近くにいたのでしょう。私は雷で発生する過大電圧から電気の運用を守る避雷器や、ガス絶縁開閉装置(家庭にあるブレーカーを大きくしたもの)の開発に長年携わってきました。雷が原因で「停電」を発生させない為に様々な避雷器の開発を経験し、国内外に新製品を納入してきましたが、技術者として次の世代に開発で得た知識を語り継いでいきたいと想っています。

図3 朝日新聞 2012年8月19日朝刊記事

今想い返すと小学校の担任だった女性教師より理科の実験・観察をたくさん指導して頂いて楽しかった事、小学校卒業にあたり、寺田虎彦の文庫本を頂いた事でさらに自然科学に興味が湧き、その後電気機器製造会社に入ってからも MIT に留学して新材料の勉強から避雷器の開発(酸化亜鉛という材料)の道に進むきっかけになったと考えており、小学校時代の先生の役割の大きさに想いをはせる今日この頃です。

一般社団法人日本電機工業会 理科教育支援ワーキンググループ 委員 齋藤 和弘
[ (株)東光高岳 ]