電気を語ろう!第9号

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JEMAの理科教育支援活動 電気を語ろう!第9号

理科教育支援ワーキンググループのメンバーのコラム、JEMA の理科教育支援活動をサポートしてくださる方々からのメッセージを紹介します。

直流・交流と電力変換のお話

JEMAの理科教育支援活動 電気を語ろう! 第9号JEMAの理科教育支援ワーキンググループでは小学校6年生向けの電気の授業プログラムを作成してきました。プログラム教材作成に際しては、メンバーで議論し、工夫して、わかりやすい教材づくりを心がけたつもりです。

その中で小学校向けということで、そこまでは教えないという用語や概念も当然あります。例えば「電圧」という言葉は、大人の皆さんであればほとんどの方が聞いたことがあるでしょうが、JEMAプログラムの中では電圧や電気抵抗という言葉を使わずに発熱の仕方の違いを説明するのに苦労しました。

同じように小学校で教えない概念に「交流」があります。小学校の理科で扱う電気は基本的には直流です。一方で、電力会社から家庭に来ている電気は交流です。1880年代に米国で電力事業が興りはじめた時期に、発明王で知られるトーマス・エジソンの推す直流送電と、同じく発明家で電気技師のニコラ・テスラ(磁束密度という物理量の単位に名前が取られています)の推す交流送電で争い、交流送電が勝ちを収めたということです。

交流送電が採用されるに至った最大の理由は、交流は変圧器で簡単に電圧を変えられるということにあります。変圧器(トランス)は鉄心に導線を巻いた比較的簡単な構造の装置です。発電所からの送配電の電圧を高くして行なうことにより、同じ電力(=電圧×電流)を送る場合の電流が小さくてすむため、送配電時の電力のロスを少なくすることができます。電柱の上に円筒状のタンクのようなものが載っていますが、これが送配電された高電圧を家庭用の100Vや200Vに下げる変圧器です。

このように電気は交流で家庭に送られますが、それを使う家庭内の家電機器の内部は、直流で動いている部分がかなり多いのです。そのため各家電機器の内部回路や外付けのACアダプターにより、交流を直流に変換して使っています。

エアコン、冷蔵庫、洗濯機などモータの使われている機器は、以前はモータを回すために電力会社からの交流をそのまま使っていましたが、最近は様子が変わってきています。これらの家電機器で「インバータ式」というのをお聞きになったことがあると思います。従来はモータはオンとオフの状態しかなくオンのときはモータはフルパワーで回転します。インバータ式では、交流を一度直流に変換し、その直流をさらに交流に変換してモータを回します(直流から交流に変換する装置がインバータです)。直流を変換する交流の周波数(変化の早さ)や電圧を変えることで、モータの回転数を自由にコントロールできます。これによって温度が安定したり、大幅な省エネが達成できたりするのです。

交流から直流、あるいは直流から交流に電気を変換するためには、電力用半導体素子を用いた電力変換技術(パワーエレクトロニクス技術)が用いられます。半導体素子やパワーエレクトロニクス技術の進歩により、これらの変換を行なう装置は小型、高効率になってきています。このコラム「電気を語ろう!」の第7号で上田さんが書いている電力の周波数変換も電力変換装置の一例です。

このように電気を使うところでは直流が関わる場面がますます増えています。また最近普及し始めている太陽光発電は、直流の電気を発電します。そうすると、交流と直流を何回も変換するのは無駄が多いということで、ある部分は電気を直流で流通させようという考えも出てきています。将来は交流と直流の役割分担も少し変わっていくかもしれません。


JEMAの理科教材や教師用セミナーでは、ここで述べた交流やインバータの話などは出てきませんが、電気に興味を持ってもらうということから言えば、家庭で実際に使っている電気や家電機器がどうなっているのか、ということはとても重要だと思います。JEMAプログラムでも、蓄電の授業で冷蔵庫の回路基板の写真を見せコンデンサーがいくつ載っているか示し、冷蔵庫が冷えるしくみをわかりやすく説明したスライドを用意するなど、電気の授業の実社会との関わりを意識してもらう工夫をしています。

JEMAのプログラムを通じて、まず先生方が実社会や家庭とのつながりの中で電気に興味を持って頂き、次世代を担う子供達に伝えて頂ければ、このワーキンググループに関わった人間として非常にうれしく思います。

一般社団法人日本電機工業会 理科教育支援ワーキンググループ 委員 小峯 繁
(富士電機株式会社 技術開発本部 技術統括センター 技術企画部 担当課長)